2011年12月26日月曜日

このベンチャー市場が熱い「イベントチケット販売サービス市場」その3

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■競合サービスの状況(英語圏編)

TechCrunchの記事「成功するスタートアップの13のモデル」に出てくるモデルのうち、イベントチケット販売サービスは"マーケットプレース"に当たると思われる。本記事によると、マーケットプレースは、ネットワーク効果(既存有名サイトへの集中)が大きく、1ユーザ当たりの料金も小額となるため、採算ラインにのせるまでに時間がかかる市場だ。収益要因は、「品目数」「出品料」「販売額」「コミッション額」となっているが、イベントチケット販売サービスの場合、「出品料」はどの企業も無料で、「コミッション額」は各企業によりそれほど大きく変わるものではなく、「品目数」と「販売額」はイベントの数とそれに参加するユーザの数に依存することとなる。

イベントの数とそれに参加するユーザの数は、結局どれだけイベント主催者と参加者をサイトに呼び込むかなので、それぞれの企業の規模は、ユニークユーザの数と比例すると考えて間違いない。そこで1ヶ月のユニークビジター数が10万を超える7社の勢力図を円グラフにしてみた。

英語圏のサービスはMeetup, Eventbrite, Eventful, punchbowlの4強と考えていいようだ。この4社についてもう少し掘り下げてみる。

□Meetup

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USA
創業 2002/01
従業員 75
ユニークビジター 2243598
ユニークビジター増加率 11%
投資状況 2008/07 : $7.5M(Series D)
投資合計額 $18.3M

Meetupは、知らない人同士がイベントを告知し参加するマッチングサイトとしては一番ユーザ数を誇るサイトである。

Meetupは、基本的に共通の趣味や目的を持つ人々がグループを形成し、そのグループの中でイベントを実施することができるサービスとなる。正確にはイベントではなくあくまで"Meet up"であり、オーガナイザーはいるものの参加する人全て平等であり、主催者が参加者に何かを与えるとか主催者が参加者を楽しませるという形をとらないことを特長としている。

グループを主催するユーザは、月額12ドル(6ヶ月払いの場合)をMeetupに支払う。それ以外の料金は発生しない。参加者はイベントが有料・無料に関わらずMeetup自体に支払う手数料はない。

チケットの販売手数料で収益を稼がない(恐らくチケットという概念はない)ため、Meetupは正確に言うとイベントチケット販売サービス市場ではないかもしれない。とはいえ、イベントを主催する人と参加したい人のマッチングサービスであり、ターゲットユーザという面では他のサービスともろ被っているためこの市場に含めて話すことにした。

UV(ユニークビジター数)を見てみる。サービス開始が2002年と古い。しかしそれでも毎年着実にユーザを伸ばしており、2011年11月の月間UV(ユニークビジター数)も去年の同年度に比べて11%の伸びとなっている。

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また、本サービスのデモグラフィクスを見ると、この市場に代表されるように女性比率が相当高い。Meetup CEOのインタビュー記事には「中小規模の、技術系ではないコミュニティには、Meetup.comは強力なブランド力を有している。」とあることを合わせると、Meetupは少なくともアメリカでは一般的なユーザに認知されており、仕事だけでなく趣味などが共通した友人との交流の場として使われていることが想像できる。

アメリカの会社であるがサービスは全世界に展開しており、日本のMeetupグループも多く存在する。

□Eventbrite

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USA
創業 2006
従業員 100
ユニークビジター 1681362
ユニークビジター増加率 65%
投資状況 2011/05 : $50M(Series E)
投資合計額 $79.6M
トの販売サイトという意味では、恐らく一番ユーザを集めているサイトである。

Eventbriteは、その1で説明した通り、イベント主催者が「イベントを登録、チケットを発行」し、そのイベントに参加したいユーザが「イベントを検索、チケットを購入」できるサイトである。

収益モデルは、チケット購入時に手数料として販売代金の2.5%+$0.99(1チケット$9.95を超える場合は$9.95)をEventbriteが受け取る。

Eventbriteは、ユニークユーザ数を今年大きく伸ばし(+65%)、去年イベントチケット販売という意味では1位だったEventfulを抜いた。

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このEventbriteの好調さの原因はFacebookとの連携にあるのかもしれない。2010/10のTechCrunchの記事によると、Eventbriteは、この1年間でFacebookとの連携を大きく強化した。FacebookのIDでEventbriteにログインすると、Eventbrite上でFacebookの友達が行く全てのイベントが一覧で見れる。また、友達がイベントチケットを買ったり選んだ事に対するコメントやリコメンデーションがFacebookを介して広がるようになっている。これのことをEventbriteは「イベントグラフ」と呼ぶそうだ。

このように、SNSとの連携は、イベントチケットの販売という市場においても重要なポイントなのかもしれない。

□eventful

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USA
創業 2004/01
従業員 35
ユニークビジター 1434592
ユニークビジター増加率 -32%
投資状況 2008/10 : $10M(Series C)
投資合計額 $19.6M

eventfulは、イベントチケット販売サービスではあるが、上記のEventbriteやMeetupとは少し方向性が違うように見える。トップサイトには、有名人(だと思う。。)のコンサートや企業が主催するような大規模イベントが並んでおり、個人が少人数でやります的なイベントは見つけられない。eventfulは、どちらかというとZeventsや日本でいうチケットぴあとかみたいなプロの大規模イベントのチケットを買うサイトというサービスを中心としてるようだ。

ただし、個人がイベントを作成し、募集する機能もあり、実際少人数のワインテイスティングクラスみたいなのもあるので、今回調べている市場のプレイヤーでもあることは間違いない。

eventfulは、昨年に比べ-32%ほどUVを落としている。

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□punchbowl

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USA
創業 2007/01
従業員 ?
ユニークビジター 997103
ユニークビジター増加率 194%
投資状況 2011/09 : $580k(Unattributed)
投資合計額 $2.68M

punchbowlは、パーティーに特化したサービスで、パーティーの準備から終了までの全てを面倒見てくれるサービスである。

例えばメールで送るオンライン招待状は、様々なデザインで封筒に入った形で送信される。

スクリーンショット 2011 12 26 0 17 00

パーティーの日時を決めるために参加者の空いてる日を集め候補となる日時を自動的にリストしてくれる機能もある。そのパーティー専用のメッセージボードがあったり、パーティーを楽しくできるような様々なTipsも参照できる。DJやイベントプランナーなどプロが必要とあらば自分の地域のベンダー一覧を検索することもできる。

イベントを単純に管理するだけでなくこういったパーティーに特化した機能をフルで持っているところが恐らく人気があがっているポイントなのだろう。日本ではパーティーの風習がないので同じサービスは成立しないと思うが、同じイベント管理サービスでも何かに特化することでさらに市場をセグメント化できるということをこのサービスは教えてくれる。

月間UVを見てみる。puchbowlは、4強の中で今年最もUVを伸ばしたサービス(+194%)である。

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創業が2007年と若いサービスであり、これからも伸びていくサービスなのだと思われる。


□最後に

実はこの市場のプレイヤーとしてここまで出さなかったが、圧倒的な競合が1つ存在している。Facebookである。

Facebookは、イベント告知機能をもっており、イベント主催者がイベント内容を登録すると、指定した範囲(全ての人が見れるか、友達のみ見れるか)でイベントが告知・募集される。出欠の管理も可能だ。今のところ、決済機能は持っていないのとイベントを検索しやすいUIにはなっていないため上記に紹介したサービスが食われることはない。とはいえ、決済機能が実装されたりするとこの市場をガラッと変えてしまうような威力はあると思う。

ベンチャーってのは常にこういうでかいとこに食われる危険性と隣り合わせなんだなと思う今日このごろでした。

■参考

http://asusync.air-nifty.com/blog/2011/12/meetupceo-2-mee.html http://techcrunch.com/2010/09/23/eventbrite-facebook/

2 件のコメント:

  1. 私のブログの、Scottへのインタビューへの言及ありがとうございます。河原あずと申します。まさしく私がアメリカで取材している領域で、興味深く拝見いたしました。

    Meetupについては、ほぼほぼおっしゃるとおりの状況だと、現地でイベントをオーガナイズしている方たちにヒアリングしていても分かります。

    ご指摘の通り、Meetup.comは、月額会費以外のFeeは徴収しないので、チケットの売上からマージンを抜くことはありません。Scottは「会費徴収の機能を提供するだけ」と表現していました。会費徴収のインフラとしてはpaypalを使っています。

    Meetup.comは様々なコミュニティで使われています。特に、生活に根ざしたカテゴリーの登録数が多いのが他サービスとはまったく違うところで、Meetupの登録数や開催数はほぼ都市の人口に比例するそうです。NY、ボストン、LA、サンフランシスコ、ポートランドが登録地域のベスト5に入るそうです。

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  2. 河原さん初めまして。コメントありがとうございます。河原さんのMeeupの記事はわかりやすくすごく参考になりました。「特に、生活に根ざしたカテゴリーの登録数が多いのが他サービスとはまったく違うところで、Meetupの登録数や開催数はほぼ都市の人口に比例するそうです。」というお話、ここまで浸透してるとちょっと他のサービスと比べ1つ先を進んでる感覚を受けますね。私自身この分野はすごく興味があるのでまたブログの更新期待しております。今後ともよろしくお願いします。

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