■どういった問題を解決しようとしているのか
電子書籍市場は、今すごい勢いで拡大している。InternetWatchの記事によると、日本における電子書籍市場は、2010年650億円であるが、2015年には2000億円になる見込みとのこと。
電子書籍の魅力の1つに低コストで世界中にコンテンツを販売できるという点がある。紙の本だと、世界中に読んでもらうためにはまず本とするために印刷する必要があり、さらにそこからそれぞれの国地域に運送する必要があるからだ。
一方で、本の需要がなくなるのかというと、少なくとも直近ではそうは考えにくい。電子書籍ではなく紙媒体で読みたいという需要はある程度の割合で存在するからだ。また、書籍に限らず例えば写真アルバム、ポスター等についても電子版だけでなく紙媒体の需要も残り続けると思われる。
今や電子書籍は多種多様なものが出版されており、本屋に売っていないものも多い。今後は、より電子書籍が普及し紙媒体の本が少なくなるに連れ、この傾向は顕著になるはずだ。では、紙媒体の書籍や写真アルバムが欲しい人はどうやって入手すればよいだろうか。
これは、電子書籍販売企業側からの視点でも見る事ができる。電子書籍を販売する企業の中には従来の出版社としての機能(印刷して本屋に流通させる機能)を持っていない会社も多い。とはいえ、紙媒体を欲するユーザに全くリーチしないのは、コンテンツを持っているのにもったいない。持っている電子書籍のコンテンツを簡単に紙媒体に印刷し、ユーザに届けることはできないだろうか?
■どんなサービスなのか
peechoは、電子書籍や写真アルバム、ポスターなどの電子媒体の印刷を請け負うサービスである。peechoは、ウェブサイトに簡単に設置できる「印刷」ボタンを提供している。ユーザがウェブサイト上にある「印刷」ボタンをクリックすると、簡単に対象の電子書籍や写真アルバム、ポスターなどの印刷媒体がpeechoにより印刷され、ユーザの元へ配送される。
以下が「印刷」ボタンを設置したサイトの例。
peechoの「印刷」ボタンの設置は非常にシンプルだ。まず、印刷する対象のファイルをオンライン上にアップロードする。次にpeechoにサインアップし、自分のサイトに設置する「印刷」ボタンのソースを入手する。
最後に、このソースを自分のサイトに貼り、peechoのアドミン画面からこのボタンの設定を行う(いくらでこの書籍を売るのかとか)。これでおしまいで、あとはユーザがボタンを押して紙媒体のコンテンツを買ってくれれば、自動的にpeechoへの手数料を差し引いた額が利益として得られる。
印刷媒体の言語は今のところ英語とヨーロッパのいくつかの言語のみのようだが、日本語や中国語もメールで確認してくれれば対応できるみたいだ。対応するページ枚数は500ページ以下とのことだが、大抵の書籍はこれに収まるだろう。
ただし、今のところコストは若干高めだ。VentureBeatによると通常5$で売られる書籍は、peechoを介して印刷すると7$になるとのこと。ただこれはpeechoのユーザ増加と共に下げることが可能と書いてある。
■会社/サービス情報
国 | オランダ |
---|---|
創業 | 2009/11 |
従業員 | 6 |
投資状況 | 2012/1 : $750k(Unattributed) |
■日本の市場について
2009/11に創業して以来、2010年にBest Business Model(TheNextWeb)を2011年にはAccenture Innovation Award for best e-commerceを受けている。同じようなビジネスモデルを行う競合はぱっと見た限り見つけられなかった。これから提携する印刷工場をどんどん増やしていく予定とのことで、こうなると規模の経済が働き、なかなか追いつけないサービスになるのではないのだろうか。
このサービスは、提携する印刷工場がない国地域では、サービスを行えないはずで(行っても利益でないはずで)、日本にすぐに入ってくる事は考えにくい。世界的に電子書籍が普及する中、印刷工場は需要の減少に頭が痛いはず。このサービスは十分日本でも立ち上がるのではないかと思う。
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